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フランスのコメディ映画 さすらいの女神たち

『さすらいの女神たち』

映画好きを自負している私が、おすすめのフランス映画は?と聞かれたら、コメディである『さすらいの女神たち』を挙げるでしょう。恋愛映画には好みがあるし、誰もが知ってる名作ではつまらない。そんな中でも特にオススメのフランス映画が、『さすらいの女神たち』です。スクリーミン・ジェイ・ホーキンスの音楽に乗せて、「さすらいの女神たち」が繰り広げるキッチュで際どい、最高にクールなエンターテインメントショーを、舞台袖や背後や二階席、さらには正面のかぶりつきで堪能しながら、束の間の人生の機微を味わう・・・。そんな贅沢なフラン映画の余韻にしばらく浸っていたいと思うのは、きっと私だけではないでしょう。ここでは『さすらいの女神たち』を筆頭に、私が大好きなフランス映画の中でも特にお勧めのフランスのコメディ映画をお伝えします!

『さすらいの女神たち』作品紹介

『さすらいの女神たち』は、2010年5月13日に第63回カンヌ国際映画祭で初上映され、同映画祭の監督賞と国際映画批評家連盟賞を受賞しています。また、第36回セザール賞では7部門でノミネートされました。『潜水服は蝶の夢を見る』などの俳優でもあるマチュー・アマルリック監督が、並みいる強豪をおさえてカンヌ国際映画祭最優秀監督賞を受賞した作品です。女流作家コレットの手記に着想を得て、実在する地方巡業のショー・ダンサーたちと落ちぶれた男との心あたたまる交流を、映画愛に満ちた華麗な映像で描き出します。

『さすらいの女神たち』あらすじ

フランスのTVプロデューサーとして活躍していたジョアキムは、トラブルを起こして業界を追われ、全てを捨てて渡米する。再起を期し、彼はアメリカのショー・ガールたちを引き連れ、祖国フランスで「ニュー・バーレスク(英語版)」の巡業公演を行い、各地でそれなりに盛況となるが、肝心のパリでの公演が実現できないでいる。昔の仲間に頼むものの、かつての悪行と今も変わらないプライドの高さから、結局、誰からも相手にされない。過去のつてを頼って奔走するジョアキムだったが、次第にダンサーたちとの間に亀裂が生じていき・・・。

『さすらいの女神たち』の監督

『さすらいの女神たち』の監督はマチュー・アマルリックです。マチュー・アマルリックは、アルノー・デプレシャン監督『そして僕は恋をする』を始めとし、ジュリアン・シュナーベル監督作品『潜水服は蝶の夢を見る』などで主演を務め、俳優としてこれまでに3度のセザール賞にも輝いています。そんな彼が、出演はもとより監督・脚本を手掛け、2010年の第63回カンヌ国際映画祭において最優秀監督賞の栄光を手にしたのが、この『さすらいの女神たち』です。『青い麦』や『シェリ』で知られる小説家のコレットが、30代に踊り子をしていた頃の思い出を手記に描いた作品『ミュージック・ホールの内幕』に着想を得て制作された本作『さすらいの女神たち』 は素晴らしいフランスを代表するフランス映画です。

『さすらいの女神たち』解説

「キングス&クイーン」「潜水服は蝶の夢を見る」の名優マチュー・アマルリックがメガホンをとり、第63回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞したロードムービー。唯一無二のエンターテイナーとして重要な役どころを果たすのは、アメリカを本拠地とし、実際にヨーロッパ各地でも公演を成功させてきた「ニュー・バーレスク」の女優です。「ニュー・バーレスク」とはヌードまでには至らないが、お色気たっぷりのダンスにユーモアや皮肉をきかせたメッセージを盛りこんだ、大人のためのエンターテインメント・ショー。煌びやかな舞台の上で、ゴージャスなランジェリーと装飾品を身に纏い、歌って踊る刺激的で独創的なショーを行う彼女たちは、決してスタイル抜群なわけでも若いわけでもありませんが、スクリーンから溢れんばかりの魅力を放っています。

ストーリーと感想(1)

マチューが演じるのは、かつては業界にその名をとどろかせ、一世を風靡した元TVプロデューサーのジョアキム・ザンド。敏腕だが周囲を省みない性格が災いして仕事仲間とトラブルを起こし、現場から追放されたジョアキムが、地位や名声ばかりか家族の絆さえ捨ててアメリカへと渡り、発掘したのがミミ・ル・ムーほか6名から成るニュー・バーレスクの一座「キャバレー・ニュー・バーレスク」だったのです。ジョアキムは自らの再起を賭けて、一座を引き連れ奇跡のカムバックを果たす算段の様子でしたが、どうやら雲行きが怪しい。意気揚々とパリに凱旋帰国をするつもりだったジョアキムの思惑をよそに、行く手を阻むのは、かつての関係者たち。どんなに時間が経過していても、すべてを水に流してくれるほど、ショービジネスの世界は甘くはない。そんなうさんくさい髭面のプロデューサーが置かれた状況を訝りつつも、長年の勘で察するバーレスクのメンバーたちは、淡々と自分たちのショーを続けます。決して深入りすることなく成り行きを見守りながら。しかし、なにかと彼に突っかかる、ミミ・ル・ムー。彼女だけは、苛立ちと不安を隠せず、売り言葉に買い言葉で、ジョアキムと口論になり、思わず彼の頬をひっぱたき、こう吐き捨てます。「これはあなたのショーじゃない。私は私の仕事をする。私たちのショーだから。あなたは飛行機代を払うだけ。」

『さすらいの女神たち』のストーリーと感想(2)

ドサ回りの旅ガラス生活。根無し草であることを自らの職業の宿命であると受け入れ、観客を沸かせながら、ルアーヴル、ナント、サン=ナゼール、ラ・ロシェルと、フランス各地を転々とするメンバーたち。身体が資本の彼女たちにとって、大きな荷物を抱えながら列車で長距離を移動する状況は、決して恵まれているとは言えません。空き時間にガイドブックを片手に観光ポイントをおさらいしたり、宿泊先のホテルのバーでの出会いに身を任せてみても、どこか空虚な思いが拭い去れないでいる彼女たちが、宅配のピッツァの到着に狂喜乱舞すら姿を遠くから捉えたシーンがみずみずしく印象に残ります。やっぱりアメリカ女はパンとチーズではなく、ピザが好き・・・いや、陽気で優しいのです。

『さすらいの女神たち』のストーリーと感想(3)

一方、ジョアキムはひとりパリに向かう道中で立ち寄ったガソリンスタンドで、「ラジオを小さく。」という彼お決まりの要求を、初めて素直に聞き入れてくれた女性に対し、これから「人を殺しに行く。」とうそぶく。「うらやましいわ、楽しそうね。武器はある? 爪ヤスリなら貸すわ。」と笑顔で返すスタンドの女性。お互いに惹かれあいながらユーモアとウィットに富んだ会話を交わします。目の前に立ちはだかるガラス一枚によってかろうじて理性を保ちつつ、ネクタイを緩める動作と無造作に束ねた髪を解くしぐさ、そして、互いのまなざしだけで、図らずも大人の恋愛の醍醐味を垣間見せてくれます。随所にちりばめられた色気と遊びのある会話もこの作品の大きな魅力のひとつです。

『さすらいの女神たち』のストーリーと感想(4)

とり繕ったり見栄を張ったりするのに必死で、周りがまったく見えていなかったジョアキム。失敗や挫折を簡単に受け入れることができない中年のめんどくささの塊のような男。最終目的地の目処が立たないツアーの途中で、自暴自棄になりながらも、二人の息子を一時的に預かり、情けない父親像を晒けだして奔走する姿は、いつしか「女神たち」の心を捉え始めます。そしてジョアキムもまた「女神たち」に向かって語りかけます。「ツアーを続けよう、明日もそのあともずっとできる限り。最後になにも残らなくてもいい。確かなものは肉体とスタイルと卓越したユーモアと生命力, I LOVE YOU」人生の賭けに負けてしまったり、どうしようもない孤独を感じてしまっても、信じるものがあれば大丈夫。希望に満ちあふれた若々しい青年ではなく、ヨレヨレのおじさんが言ってこそ響く言葉です。

キャスト(キャバレー・ニュー・バーレスク)

ジョアキム・ザンド - マチュー・アマルリック: 座頭。元有名テレビ・プロデューサー。

ミミ・ル・ムー - ミランダ・コルクラシュア: 白い羽を使うダンサー。

キトゥン・オン・ザ・キーズ - スザンヌ・ラムジー: ピアノ演奏と歌。

ダーティ・マティーニ - リンダ・マラシーニ: 紙幣を食べるパフォーマンスと蜘蛛の巣のパフォーマンスを披露。

ジュリー・アトラス・ミュズ - ジュリー・アン・ミュズ: 切断された腕のパフォーマンスと大きな風船のパフォーマンスを披露。

イーヴィ・ラヴェル - アンジェラ・ドゥ・ロレンゾ: 椅子を使ったパフォーマンスを披露。

ロッキー・ルーレット - アレクサンドル・クレイヴン: 唯一の男性パフォーマー。ルイ国王に扮したパフォーマンスを披露。

ユリス - ユリス・クロッツ: ジョアキムのアシスタント。

『さすらいの女神たち』キャスト(その他)

フランソワ - ダミアン・オドゥール: テレビ・プロデューサー。ジョアキムの昔の仲間。

ガソリンスタンドの女性 - オレリア・プティ

キャバレーの支配人 - アンドレ・S・ラバルト

シャピュイ - ピエール・グランブラ: ジョアキムとフランソワの昔の上司。

スーパーのレジの女性 - アンヌ・ブノワ

シャピュイの舞台女優 - ジュリー・フェリエ